「手と思想の職人録」 noteの方が読みやすいです。https://note.com/kurashikku_work
賃貸物件を持っている大家さんや、不動産投資をしている人にとって、修繕費はかなり大きな問題だと思います。
特に、中古物件を仕入れるとき。
物件価格だけを見て「安い」と思っても、実際にどれくらい直す必要があるのかによって、その物件が本当に買っていい物件なのかは変わります。
逆に、少し高いと感じる物件でも、修繕費でアドバンテージを持てるなら、採算が合うこともあります。
修繕の見立てができる人は、購入できる物件の選択肢が増えます。
人が手を出しにくい物件も、選択肢に入ってくる。
それは、不動産投資においてかなり大きな差になると思います。
今回は、中古物件の修繕費を買った後ではなく買う前から見ることと、大家さんや不動産投資家と多能工職人が組む意味について、現場側の視点で書いてみます。
【中古物件は、買った後ではなく買う前から修繕費を見る】
中古物件の怖さは、買ってから初めて分かることがある点です。
壁紙を貼り替えれば済むのか。
設備交換まで必要なのか。
床下や屋根裏に問題があるのか。
見えている部分だけの修繕で済むのか。
それとも、見えない部分に大きな欠陥が隠れているのか。
そこを見ないまま買ってしまうと、購入後に想定外の修繕費が出てきます。
もちろん、不動産投資において、物件を買った後に修繕費を抑えることは大事です。
でも本当は、買った後に業者へ見積もりを取るのではなく、買う前の段階で修繕費を見極める方が理想だと思っています。
その物件はいくらかければ使える建物になるのか。
その修繕費をかけた上で、いくらの家賃で貸せるのか。
周辺相場を考えたときに、入居がつく物件になるのか。
最終的に売るのか、持ち続けるのか。
そこまで見て、初めて適正な購入価格が見えてくるはずです。
つまり、中古物件の修繕判断は、買った後の話ではなく、買う前から始まっていると思っています。
【自分が古民家を買ったときに見たところ】
自分自身も、古い建物を購入した経験があります。
その時、内見でまず見たのは、表面のきれいさではありませんでした。
むしろ、表面的な汚さや古さはあまり気にしません。
汚れた壁紙、古い床材、傷んだ建具、古くなった設備などは、基本的には修繕しやすい部分です。
もちろん費用はかかりますが、建物自体の寿命や根本的な欠陥とは、直接関係しないことも多いです。
自分が気にするのは、もっと奥の部分です。
真っ先に床下に潜りました。
屋根裏も確認しました。
柱や土台の状態を見て、屋根裏に雨漏りの跡がないかも見ました。
動物が入り込んだ形跡や、寝床、糞尿の跡がないかも確認しました。
そして、写真を撮って、隠蔽部の状態を売主側にも報告しました。
なぜそこまで見るのか。
それは、隠れている部分にこそ、建物の価値を大きく左右する問題があるからです。
柱や土台が腐っていれば、建物としての価値は下がります。
屋根裏に雨漏りの跡があれば、屋根や外壁、構造部まで疑う必要があります。
動物が入り込んでいれば、断熱材や天井裏、衛生面、臭いの問題も出てくるかもしれません。
こういうことは、売主側も気づいていないことがあります。
悪意があるかどうかではなく、そもそも床下や屋根裏まで見ていないことが多いからです。
だから、中古物件を買うなら、表面だけではなく、見えない部分をどこまで把握できるかがかなり大事になります。
状態を正しく把握する。
修繕費を見積もる。
その上で採算を見る。
そこで初めて、「この価格なら買える」「この価格では買えない」という判断ができます。
たとえば、この価格で売ってもらえれば、修繕費をかけても利益が出せる。
だからこの金額なら買います。
そういう話ができれば、それが交渉価格の根拠になります。
不動産投資における修繕費は、ただの工事代ではありません。
購入価格を判断するための材料でもあります。
【職人の現調は、修繕費まで見る実務的な建物調査】
多能工に限った話ではありませんが、全体を見られる職人やリフォーム屋は、日常的に仕事の中で建物の状態を見ています。
いわゆる現地調査、現調です。
この現調は、一般的なホームインスペクションとは少し性質が違います。
ホームインスペクションは、第三者の立場から建物の状態を評価するものです。
それ自体には意味があります。
ただ、実際にどう直すのか、どこまで直すのか、いくらかかるのかという話になると、修繕費はどうしても概算になりやすいと思います。
一方で、職人の現調は、最初から修繕を前提に見ています。
雨漏りの相談があれば、天井の染みだけを見るわけではありません。
屋根裏を見ます。
外壁や屋根を見ます。
必要であれば散水テストをして、どこから水が入っているのかを調べます。
床が沈むという相談があれば、床の表面だけを見るわけではありません。
床下に潜ります。
土台、根太、大引、束、湿気、シロアリ被害の有無を見ます。
そして、どこをどう直せばいいのか、どこまで壊す必要があるのか、どこは残せるのか、工事としてどれくらいかかるのかを考えます。
原因が分からないまま、正確な見積もりは出せません。
表面だけを見て金額を出せば、あとから追加になる可能性が高くなります。
だから、ちゃんと見積もろうとすれば、自然と建物の状態をかなり具体的に見ることになります。
状態を見る。
原因を見る。
直し方を見る。
費用を見る。
そこまでつながって初めて、物件購入の判断材料になります。
中古物件を買う前に必要なのは、単なる状態確認だけではありません。
その建物を使える状態にするには、どこを、どう直して、いくらかかるのか。
そこまで見えることが大事だと思っています。
【買った後に困る理由】
中古物件を買ってから、いざ修繕に入ると、想定より費用がかかることがあります。
それ自体は珍しいことではありません。
古い建物は、開けてみないと分からないことがあります。
壊してみたら下地が悪かった。
設備を外したら配管が傷んでいた。
床をめくったら湿気や腐食があった。
壁を剥がしたら雨漏りの跡があった。
こういうことは普通にあります。
ただ、問題は、それをどこまで事前に想定していたかです。
買う前の段階で、ある程度リスクを見ていたのか。
それとも、表面的な内装費だけを見て買ってしまったのか。
ここで結果はかなり変わります。
買った後に想定外の修繕が出てくると、大家さん側はかなり苦しくなります。
修繕費が増える。
募集開始が遅れる。
家賃収入が入る時期が後ろにずれる。
場合によっては、利回りの前提が崩れる。
投資として見たときには、かなり大きな問題です。
だから、修繕費は買った後に考えるものではなく、買う前から見ておくものだと思っています。
【工事費が膨らむ理由】
修繕費が膨らむ理由は、単純に材料や職人代が高いからだけではありません。
現場の見方や段取りによって、無駄な工程が発生することもあります。
たとえば、内装、水道、電気、大工、設備、清掃。
それぞれの職人を個別に呼んで、それぞれと打ち合わせをする。
もちろん、それが必要な現場もあります。
でも、小規模な賃貸物件の修繕では、そこまで細かく分けることで逆にロスが出ることもあります。
職人が複数人になれば、それぞれの段取りが必要になります。
連絡も増えます。
現場に入る順番も調整しなければいけません。
お互いの仕事の境目も出てきます。
そして、それぞれの職人は基本的に自分の専門範囲を見ます。
内装屋さんは内装を見る。
設備屋さんは設備を見る。
電気屋さんは電気を見る。
大工さんは大工仕事を見る。
それぞれの仕事としては正しいです。
ただ、全体を見ていないと、工事内容を切り詰めきれないことがあります。
本当は一緒にやれば済むことを、別々に手配してしまう。
先にここを直しておけば、後の工事が楽だったのに、それを見落とす。
逆に、そこまでやらなくてもよかった工事を、安心のためにやりすぎてしまう。
こういうロスが積み重なると、修繕費は増えていきます。
現場の仕事は、前後の工程でつながっています。
職人は、基本的に次の工程のことを考えながら施工しています。
次に入る職人が困らないように。
仕上がりで無理が出ないように。
後工程で余計な手間が増えないように。
そういうことを考えて、できるだけ気を利かせた施工をします。
ただ、施主がいろいろな業者に分離発注している現場では、職人同士のつながりがないことも多いです。
現場で会うことすらない場合もあります。
そうなると、自分がどこに気を利かせたのか。
どこは現場事情で気を利かせられなかったのか。
次の工程でどこを見てほしいのか。
そういう引き継ぎがほとんどできません。
ここに、施工の無駄が発生します。
たとえば、クロス仕上げになる下地をどこまで丁寧に作るか。
一人で下地から仕上げまで施工するなら、後の工程まで自分で分かっています。
ここは今の段階でそこまで手間をかけなくても、後の工程でフォローすればきれいに納まる。
逆に、ここは今しっかりやっておかないと、後で余計に手間がかかる。
そういう判断ができます。
つまり、自分の中で前工程と後工程をつなげながら、コスパとタイパを見て施工できます。
でも、複数の職人がバトンタッチしながら施工する場合は、そう簡単にはいきません。
気を利かせる職人もいます。
あまり気を利かせない職人もいます。
気を利かせたくても、現場事情でそこまでできないこともあります。
そもそも、どこに気を利かせるべきかの感覚が、職人同士で噛み合わないこともあります。
結果として、かけた手間や、かけなかった手間が、効率よく連動しない。
そこに無駄が出ます。
本当は半日で済ませてもいい部分でも、次の職人とその場で打ち合わせできないなら、後で迷惑をかけないように余計に手をかけるしかないことがあります。
仕上がりや次工程の職人の負担を考えて、念のため一日かけて整える。
それは職人としては誠実な判断です。
でも、現場全体で見ると、そこに余計な費用が乗ることもあります。
全体の各職種の絡みを見られる人がいないと、現場は噛み合いにくくなります。
それを担えるのが、リフォーム屋のベテラン監督や、工務店の親方のような人です。
ただ、その人が入れば、当然その人件費もかかります。
それは必要な費用です。
むしろ、本来はそこに価値があります。
でも、投資用の小規模物件では、その費用まで乗せると、普通のリフォーム工事の金額になってきます。
利回りを考えると、そこが難しい。
では、購入者自身がその役割を担えばいいのか。
理屈としては、その方が費用を抑えられるかもしれません。
でも、それをやるにはプロと同じだけの工事知識が必要です。
それだけではなく、時間と労力もかなり使います。
各職種の仕事の流れを理解して、どこを誰に頼み、どの順番で進め、どこまでやれば十分なのかを判断しなければいけません。
職人同士を連携させる指揮も必要です。
さらに、現場ごとに状況を確認し、必要があればその場で判断を変えていく必要もあります。
それができなければ、工事は見込み通りに進みません。
結果的に追加費用がかかることになります。
つまり、大家さんが自分で修繕を管理して費用を抑えることは、簡単なようでかなり難しい。
誰でも簡単にできることではないと思っています。
【自分が実際にやっていること】
自分は、住宅リフォームの多能工職人として仕事をしています。
大工、内装、水まわり、電気、住宅設備、清掃など、住宅の中で起きる修繕を、できるだけ一人で見ています。
もちろん、何でもできるわけではありません。
サッシ、ユニットバス、外壁塗装、足場、業務用設備、大規模な工事など、必要に応じて専門の職人に頼むものもあります。
ただ、小規模な住宅修繕や、賃貸物件の入居前整備のような現場では、多能工が見られる範囲はかなり広いと思っています。
実際に自分は、大家さん、地主さん、会社員をしながら不動産投資をしている方などから、物件の修繕相談を受けることがあります。
現地を見て、どこを直すべきか、どこは後回しでいいか、どこまでやると採算が合わなくなるかを一緒に考える。
そのまま施工まで任せてもらうこともあります。
なので、これは机上の話ではありません。
自分が今まさに現場でやっていることです。
【多能工職人がいると何が変わるのか】
多能工ができることは、単に「いろいろ施工できる」ということだけではありません。
現場全体を見て、複数の工事がどうつながっているかを判断しやすいこと。
専門職を呼ぶべきところと、自分で対応できるところを分けられること。
今やるべき修繕と、今回は見送ってもいい修繕を整理しやすいこと。
ここに意味があります。
たとえば、洗面台を交換するとします。
商品だけ見れば、洗面台の交換です。
でも実際には、給水、給湯、排水、電源、壁や床の状態、下地、寸法、搬入経路、使う人の体格、清掃性、予算、工期などが絡みます。
床を貼り替えるにしても、床材だけ見ればいいわけではありません。
下地の傷み。
既存の不陸。
建具との高さ関係。
巾木との取り合い。
家具を動かせるか。
入居前なのか、入居中なのか。
そういうものを見ながら判断します。
大家さんや不動産投資家にとって、修繕費を抑えることは大事です。
でも、安くすることと、無駄を減らすことは違います。
見た目を整えるためにクロスを貼り替えることはよくあります。
ただ、壁の下地が傷んでいたり、結露や漏水の跡があったりするのに、表面だけきれいにしても、あとでまた問題が出るかもしれません。
逆に、まだ使える設備を全部新品に交換すれば、見た目は良くなります。
でも、その物件の家賃帯や入居者層、運用方針を考えたときに、そこまで費用をかける必要があるのかは別問題です。
修繕には、かけるべきお金と、かけなくてもいいお金があります。
ここを間違えると、利回りを守るつもりで削った修繕が、あとでトラブルを生むこともあります。
反対に、安心のためにやりすぎた修繕が、収支を圧迫することもあります。
だから、自分が大家さん向けの修繕で大事だと思うのは、ただ安くすることではありません。
その物件にとって、今本当に必要な修繕は何か。
どこまでやれば入居に耐えられるのか。
どこは将来のトラブル予防として手を入れた方がいいのか。
どこは今回は見送ってもいいのか。
そういう判断を、現場を見ながら整理することです。
【多能工は、大家さんにとって都合のいい便利屋ではない】
ここは誤解されたくないところです。
多能工は、安く何でもやってくれる便利屋ではありません。
少なくとも、自分はそういう立ち位置では仕事をしていません。
できることはやります。
できないことは、できないと言います。
専門職に頼んだ方がいいものは、そう伝えます。
無理に全部を自分で抱え込むことが、大家さんのためになるとは限らないからです。
大事なのは、誰がやるかではなく、現場がちゃんと納まることです。
多能工が一人で納めた方がいい現場もあります。
逆に、専門職を呼んだ方がいい現場もあります。
その判断を含めて、修繕だと思っています。
だから、大家さんや不動産投資家にとって多能工職人とつながる意味は、単に安く工事できることではないと思います。
現場を見て、優先順位を整理できること。
小さな修繕をまとめて相談できること。
必要な工事と不要な工事を分けられること。
買う前から、修繕費と採算を一緒に考えられること。
そこに価値があると思っています。
【増やしたいのは、単発ではなくパートナー関係】
ここで誤解されないように書いておくと、自分は不動産投資のプロではありません。
利回りの計算や、融資、税金、出口戦略、売買判断について、投資家の方と同じ目線で語れるわけではありません。
自分はあくまで、建物を見て、修繕方法を考え、実際に手を動かして直す側の人間です。
つまり、修繕のプロです。
だからこそ、不動産投資家や大家さんとは相性がいいのだと思っています。
投資家側には、物件を見る目、収支を見る目、出口を考える視点があります。
職人側には、建物の状態を見る目、修繕方法を考える視点、現場でどれくらい費用がかかるかを読む感覚があります。
お互いに足りない分野を補い合える。
ここに、大家さんや不動産投資家と、多能工職人が組む意味があると思っています。
自分が増やしていきたいのは、単発で安く使われる関係ではありません。
物件を見る段階から相談されて、修繕費や採算を一緒に考え、必要な工事を現実的に進めていく関係です。
大家さんや地主さん、不動産投資をしている人にとって、修繕費は利回りに直結します。
でも同時に、建物は人が住むものでもあります。
入居者が困るような削り方をすれば、結局あとで問題になります。
見た目だけ整えても、下地や設備に問題があれば、また修繕が必要になります。
だから、必要なところには手を入れる。
でも、やらなくていいところまで過剰にやらない。
その判断を一緒にできる関係が大事だと思っています。
【最後に】
大家さんや不動産投資家にとって、修繕費は利回りに直結する大きな問題だと思います。
でも、修繕費はただ削ればいいものではありません。
そして本当は、買った後に考えるだけでも遅いことがあります。
中古物件は、買う前から修繕費を見ておく必要があります。
見えている内装だけではなく、床下、屋根裏、構造、雨漏り、設備、配管、使い方、出口まで含めて考える。
そこまで見て、初めて採算が見えてくる。
ズブズブの関係で相談できる多能工職人がパートナーにいれば、不動産投資はかなり有利になると思います。
これは、安く使える職人を抱えるという意味ではありません。
物件を買う前から一緒に状態を見て、修繕費を考え、必要な工事と不要な工事を整理できる人がいるという意味です。
買っていい物件か。
いくらなら買える物件か。
どこまで直せば貸せる物件か。
どこまで直すと採算が合わなくなる物件か。
そういう判断を、現場側から一緒に考えられる人がいること。
それは、小規模オーナーにとってかなり大きな力になると思います。
自分は、すでにそういう形で仕事をしています。
そして、これからはその関係をもっと増やしていきたいと思っています。
賃貸物件の小規模修繕、原状回復、入居前整備、中古物件購入前の修繕相談などで、どこまで直すべきか迷うことがあれば、Kurashikku Workのホームページからメールでご相談ください。
対応エリアや内容によってできること・できないことはありますが、現場を見て、必要なところに必要な分だけ手を入れる方法を一緒に考えます。
